『タテ社会の人間関係』(中根千枝著)から考える声優業界タテ社会

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こんばんは。Mnt.です。

先日、本屋で時間つぶしに読む本を漁っていましたら目につくタイトルの本があり購入しました。
それが、こちらです。
中根千枝(1967)『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』講談社現代新書

タテ社会の人間関係 [ 中根千枝 ]

価格:756円
(2017/5/14 13:46時点)
感想(6件)


声優業界は、「タテ社会」だと言われます。

肌感覚では、ああそうかなあと思いますが、具体的にどんなものなのか言葉で説明しろと言われたたら悩んでしまいます。そういうもやもやがあったからでしょう。つい手に取ってしまいました(万引きしたという意味ではありません。購入したという意味です。揚げ足を取って悦に入るのが好きな人の相手は時間の無駄ですから先に言っておきます。

現時点で100万部を優に超える、ベストセラー本です。恥ずかしながら初めて知りました。

太平洋戦争に敗戦した約20年後に書かれた本なので、さぞ書いてある内容が古くて参考にならないかなあと思っていましたが…いや、これ!日本社会の真理なんじゃねえの!!!という驚きを感じるくらい、ぐわーっと目の前が明るくなりましたね!全然、古くないです。現在進行形の理論でした。

日本社会と言ったのは、声優業界は勿論、日本の学校や職場、地域社会でも通じる構図がそこに書かれていたからです。タテ社会は声優業界に特有のものではなく、日本社会の病理特徴なのです。
印象に残った部分を抜粋します。

(54ページ)————-
事実、日本社会における、人間関係の機能の強弱は、実際の接触の長さ、激しさに比例しがちである。そしてこの要素こそが、往々にして、集団における個人の位置づけを決定する重要な要因となっているのである。日本のいかなる社会集団にあっても、「新入り」がそのヒエラルキーの最下層に位置づけられているのは、この接触の期間が最も短いためである。年功序列制の温床もここにある。
————————-

これなんて、会社でも部活でもまだありますよね。落語の世界だと、入門が1日でも遅いとたとえ年齢や技術が上でも身分は下になるそうです。声優業界の先輩後輩でも、そういった”空気”はありますね。

そこで、声優事務所におけるタテ社会を、この本の116ページ以降(5-集団の構造的特色)を参考にして、図にしてみました。

まず頂点に「経営者」がいて、その下に声優を管理する「営業・マネージャ」、先輩声優、後輩声優という順に関係が繋がっていきます。

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図の左側に書いたのが、上下の層が何で繋がっているかです。経営者と営業は、報酬により繋がっています。これは雇用関係という大変健全なものです。

ただ、この下の、営業と声優の関係が少々厄介で、仕事をふるふらないによって親密度が左右される関係です。

さらにその下の、声優同士の先輩後輩関係は、「こいつは俺の事を慕っているから可愛がってやろう」のような、お金も仕事も関係ない(何ら価値を持たない)感情のつながりです。

注目して頂きたいのは、上下の関係は明確に繋がっていますが、横の線がないという事です。営業同士は限られた人件費予算のパイを奪い合う関係であり、同レベルの声優同士は仕事を奪い合う関係です。

ほぼ他人、いや、敵と言ってもいいでしょう。
タテ社会は、「ツリー状」なんですね。面白いですね。
ここでもう一つ、本から抜粋します。(P124 破局の結果は「乗っとり」か「分裂」)

(125ページ)———————–
この破局の結果するところは、この集団からa(普通cを伴う)を除外する(これがすなわち「番頭に乗っ取られる」ということである)か、bが彼の一族郎党をひきつれて新たに独立集団をつくる(これがいわゆる「分裂」である)か、いずれかの道しかなくなってくる。
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この文章でいう[a][b][c]というのは、[a]が集団のリーダー、[b]と[c]がその有力な幹部で、それぞれ下に多数の部下がいるというのを想像してください。
その構図の時に、力を持った[b]が乗っ取るか、分裂するかという事を書いています。

私の書いた下手な図でいうと、例えば、営業①が仕事をたくさん取れるのに、能力の劣る②や③と報酬に差がないことを不満に思って分裂するケースでは、①と線でつながっている声優ごと(ツリー状の枝ごと)ごっそり別集団を作るなんて事が想像できます。

また、有力声優Aが、個人的な外部とのつながりで仕事を取ってきたのに、直属の営業①が、ライバルの声優Bにその仕事を与えてしまって不信感を持つケースでは、Aが舎弟のa、bごと事務所を辞めるなんてこともあります。
哀しい事に、力のない末端のa~jが単独で事務所を辞めることは、単なる自滅です。

力がないので、上の人間からの無理難題でも、涙を飲んで従わざるを得ないのです。



でも、待ってください。ここでもし、末端声優が、宅録で仕事を持っていたらどうでしょう!

たとえ、事務所にポイッとされても、かろうじて生き残る事ができます。
他の手段を持つという事は、リスクを回避することにもなるのです!!上の人間に、思い切った発言もできます!

これが結論ですね。宅録やりましょう。そういうことです。

最後に、ちょっと笑っちゃったのが、やはり戦争の記憶がまだ残る時代に書かれていた本であるだけに、戦場での部隊が例として記述されていましたね。

ヨコ社会の米英軍は、小隊長が死ぬと代わりがすぐに出てきて最後の一人になるまで秩序を保つが、タテ社会の日本軍は、小隊長に命を預けられる反面、小隊長を失うと統率が取れなくなって壊滅するそうです。面白いですね。

それではまた。

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